テキサス州ザ・ウッドランズで開催されたシェブロン選手権は、劇的な幕切れを迎えました。日本の西郷真央選手が、5人によるプレーオフを制し、自身初のLPGAツアー優勝をメジャータイトルという最高の形で飾りました。
最終日、首位と差がある位置からスタートした西郷選手は、粘り強いプレーを展開。最終18番パー5でバーディーを奪い、通算7アンダーでホールアウト。この時点で、キム・ヒョージュ選手(韓国)、イン・ルオニン選手(中国)、アリヤ・ジュタヌガーン選手(タイ)、リンディ・ダンカン選手(米国)と並び、勝負はプレーオフへともつれ込みました。
息詰まるプレーオフ、勝負を決めた3フィート
プレーオフは、最終日と同じ18番パー5で行われました。5人のうち、イン選手が2オンに成功し、イーグルパットのチャンスを得るなど有利な状況を作ります。しかし、12フィートのイーグルパットは惜しくも外れ、続くバーディーパットもカップに嫌われました。ジュタヌガーン選手もバーディーパットを決めきれず、勝負の行方は西郷選手に託されます。

「落ち着こうと最善を尽くしました」と語った西郷選手。通訳を介して語られた言葉通り、プレッシャーのかかる場面で見事な集中力を見せます。約3フィート(約90センチ)のバーディーパット。そのボールがカップに吸い込まれた瞬間、西郷選手のLPGAツアー初優勝、そしてメジャータイトル獲得が決まりました。プレー前は緊張で震えていたという彼女ですが、勝負どころで冷静さを保ち、見事にチャンスをものにしました。
LPGAツアー初優勝と日本人初の快挙
23歳の西郷選手にとって、これは待ち望んだLPGAツアー初勝利です。昨シーズンはルーキー・オブ・ザ・イヤーに輝きながらも、CPKC女子オープンやビュイックLPGA上海で2位に終わるなど、あと一歩で優勝を逃す悔しさを経験していました。「昨年は本当に厳しい戦いでした。手が届きそうで届かず、とても残念でした。今年、LPGAのタイトルを獲得できて、非常に興奮しています」と、喜びを語っています。
今回の優勝は、日本人選手として初めてシェブロン選手権を制覇するという快挙でもあります。また、樋口久子、渋野日向子、笹生優花、畑岡奈紗に続く、日本人5人目のメジャーチャンピオンとなりました。日本ツアーでは既に6勝(うち5勝は2022年)を挙げており、その実力は折り紙付きでしたが、世界の舞台で大きなタイトルを獲得したことは、彼女のキャリアにおいて重要な一歩となるでしょう。
プレーオフ進出者と最終成績
選手名 | 国籍 | 最終日スコア | 通算スコア | プレーオフ結果 |
西郷 真央 | 日本 | 74 (+2) | -7 (281) | 優勝 (バーディー) |
キム・ヒョージュ | 韓国 | -7 (281) | ||
イン・ルオニン | 中国 | -7 (281) | ||
A.ジュタヌガーン | タイ | -7 (281) | ||
リンディ・ダンカン | 米国 | -7 (281) |
H2: 最終日の展開とそれぞれのドラマ
最終日は、各選手にとって浮き沈みのある展開となりました。特に、ラウンドの大半をリードしていたジュタヌガーン選手は、最終18番で3打目をわずか数インチしか進められないミスからボギーとし、プレーオフに加わる形となりました。フロントナインでは2バーディー、1イーグルと好調でしたが、「バックナインのパー5でいくつかミスをしてしまった」と悔やみました。


ゴルフ用品・ウェア

一方、34歳のベテラン、ダンカン選手はプレーオフでボギーとし、10年以上にわたるツアー初優勝の夢は叶いませんでした。それでも、「メジャーでトップ5に入れたこと、優勝争いの緊張感を味わえたことは素晴らしい経験。自分のスイングへの対処法など、学ぶべき点もある」と、全体的なパフォーマンスには手応えを感じている様子でした。
伝統のダイブと優勝の価値
優勝賞金120万ドル(約1億8千万円 ※推定)を獲得した西郷選手は、大会の伝統となっている18番グリーン脇の「ポピーズポンド」へのダイブを敢行。チームメンバーと手をつないで水に飛び込み、満面の笑みを見せました。これは、2023年のリリア・ヴ選手に続き、テキサス開催となってから3人目のダイブとなります。
「飛び込んだら深くて、最初は溺れるかと思った」と、泳ぎはあまり得意ではないことを明かした西郷選手。少しヒヤリとする場面もあったようですが、それもまたメジャーチャンピオンだけが味わえる特別な体験です。
今回のシェブロン選手権は、3年間で2度目のプレーオフ決着となり、最後まで目の離せない接戦となりました。西郷選手のメジャー初制覇は、日本のゴルフ界にとって明るいニュースであり、今後のさらなる活躍への期待が高まります。