
青い空の下、緑の芝生が広がるゴルフコース。爽快なスイングで放たれた白いボールは、美しい放物線を描いてフェアウェイに着地…するはずが、狙いとは違う方向へ飛び出し、深いラフや池の中に消えてしまうことも。
アマチュアゴルファーなら誰もが経験する、この「 ロストボール 」。実は、私たちが楽しむゴルフの裏側には、年間数十億個ものゴルフボールが環境中に紛失しているという、あまり知られていない現実があります。
私たちの知らないゴルフボールの行方
CNNの記事によると、アメリカでは2023年に4500万人、世界ではさらに3160万人がゴルフをプレイしています。そして、アメリカだけでも16,752ものゴルフコースが存在し、年間5億3100万ラウンドものゴルフが楽しまれているのです。
しかし、ラウンド中にゴルフボールを失くすことは、アマチュアにとっては日常茶飯事です。コースの難易度やプレイヤーのスキルにもよりますが、1ラウンドあたり平均1~4個のボールを失くすと推定されています。
Found Golf Balls CEOのShaun Shienfield氏は、その数を1ラウンドあたり平均3~4個と見ています。彼の低い方の見積もりを採用するだけでも、アメリカだけで年間15億個以上のゴルフボールが失われている計算になります。これは、地球の円周を1.5周以上も覆ってしまうほどの途方もない数です。
さらに、デンマークゴルフ協会のコースマネージャーであるTorben Kastrup Petersen氏は、世界全体では年間30億~50億個ものゴルフボールが失われている可能性があると指摘しています。
では、これらの膨大な数のゴルフボールは、一体どこへ消えてしまうのでしょうか?
海と森を脅かす、小さな白い脅威
多くのゴルフボールは、コース内の池や林の中に消えていきます。しかし、海沿いのコースでは、海に落ちてしまうボールも少なくありません。

海に落ちたゴルフボールは、海洋生物にとって深刻な脅威となります。ゴルフボールの主成分であるプラスチックは、自然分解されるまでに非常に長い時間を要します。その間、波や紫外線によって細かく砕かれ、マイクロプラスチックとなって海洋を汚染したり、海洋生物が誤って食べてしまう危険性があります。
マイクロプラスチックの脅威:目に見えない危険
マイクロプラスチックは、海洋生物の体内に蓄積され、成長や繁殖に悪影響を及ぼす可能性があります。また、食物連鎖を通じて、最終的には人間の体内に取り込まれることも懸念されています。
マイクロプラスチックによる健康被害については、まだ研究段階ではありますが、発がん性や内分泌かく乱作用などが指摘されており、世界中でその危険性が注目されています。
ゴルフボールの分解と有害物質
ゴルフボールが分解される過程で、亜鉛やその他の有害物質が溶け出す可能性も懸念されています。これらの物質は、水質汚染や土壌汚染を引き起こし、生態系に悪影響を及ぼす可能性があります。

持続可能なゴルフのために、私たちにできること
ゴルフは自然の中で楽しむスポーツであるからこそ、その自然を守る責任が私たちゴルファーにはあります。ゴルフボール問題の深刻さを認識し、持続可能なゴルフを目指して行動を起こしていく必要があるのではないでしょうか。

具体的には、以下のような取り組みが考えられます。
- ボールをなるべく失くさないようにする: コースマネジメントをしっかり行い、自分の力量に合ったコースを選ぶことも大切です。
- 環境に優しいボールを選ぶ: 生分解性プラスチックを使用したボールや、リサイクル素材を使用したボールなど、環境負荷の少ないボールを選ぶことも有効な手段です。
- ロストボールを回収する: ボランティア活動などに参加し、コース内や海岸に散乱したボールを回収する活動も積極的に行われています。
- ゴルフ場を選ぶ: 環境保護に積極的に取り組んでいるゴルフ場を選ぶことも、持続可能なゴルフを支援することに繋がります。
ゴルフボール問題は、私たちゴルファー一人ひとりの意識と行動によって改善できるはずです。未来の世代にもゴルフを楽しめる豊かな自然を残すために、今こそ「責任あるゴルファー」としての自覚を持ち、行動を起こしましょう。