マスターズウィークの水曜日は、オーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブが特別な雰囲気に包まれる日です。本戦の緊張感が漂う前のこの日、恒例の「パー3コンテスト」が開催されます。これは単なるエキシビションマッチではなく、世界トップクラスのゴルファーたちが家族と共に過ごす、心温まる時間なのです。
マスターズウィークの心和む一日
1960年から続くこのパー3コンテストは、マスターズ本戦に出場する選手たちが、パートナーや子供、時には孫やひ孫までもキャディとして伴い、9ホールのパー3コースをプレーする特別なイベントです。普段は見られない選手たちのリラックスした表情や、家族との愛情あふれるやり取りが、会場を和やかな雰囲気で満たします。

白いキャディウェアに身を包んだ小さな子供たちが、一生懸命クラブを運んだり、パットのラインを読もうとしたりする姿は、観客の心を掴んで離しません。選手たちも、我が子のショットに一喜一憂し、時には手を取り、ゴルフの楽しさを伝えています。それは、勝敗以上に大切なものがここにあることを示唆しています。


世代をつなぐ、緑の上の笑顔
このイベントの素晴らしさを象徴するのが、レジェンドたちの存在です。例えば、マスターズを3度制したゲーリー・プレイヤー。動画の中でも語られているように、彼は自身の子供たちをキャディに従え、やがて孫たち、そして今ではひ孫たちと共にこの舞台に立ち続けています。89歳(動画公開当時)になってもなお、プレーを楽しみ、家族との時間を慈しむ姿は、パー3コンテストが世代を超えて愛される理由を物語っています。

選手例(動画より) | 家族との様子 |
ジョーダン・スピース | 子供を抱きかかえ、家族と歩く姿 |
ジャスティン・トーマス | 小さな子供を抱き、家族と共に |
スコッティ・シェフラー | 妻と幼い子供と触れ合う微笑ましいシーン |
ゲーリー・プレイヤー | ひ孫たちと笑顔で会話し、イベントを楽しむ様子 |
ローリー・マキロイ | 娘にパッティングを教え、一緒に楽しむ姿 |
プレイヤー氏だけでなく、多くの選手がこの日を家族サービスと、ファンへの感謝を示す機会として大切にしています。普段は厳しい勝負の世界に生きる彼らが、この日ばかりは一人の父親、夫、あるいは祖父としての顔を見せてくれるのです。
勝敗を超えた「魔法の時間」
もちろん、競技としての側面もあります。ホールインワン(エース)が出れば会場は大いに盛り上がり、時にはプレーオフまでもつれる接戦が繰り広げられることも。動画の年には、コロンビアのニコ・エチェバリアがJJ・スポーンとのプレーオフを制して優勝カップを手にしました。エースも3つ記録されるなど、技術的な見どころも少なくありません。

しかし、このコンテストの最も大きな魅力は、スコアカードには記されない「魔法のような時間」そのものにあるのかもしれません。子供たちの屈託のない笑顔、選手たちの優しい眼差し、そしてオーガスタの美しい緑が織りなす風景は、観る者の心に深く刻まれます。普段のトーナメントでは感じられない、純粋なゴルフの喜びと家族愛に満ちた空間です。


語り継がれるジンクスと、かけがえのない記憶
パー3コンテストには有名なジンクスがあります。「このコンテストの優勝者は、その年のマスターズ本戦では優勝できない」というものです。これまで、このジンクスを破った選手は一人もいません。

しかし、選手たちはこのジンクスを気にするそぶりも見せず、この特別な午後を満喫します。なぜなら、ここで得られる家族との時間は、マスターズのグリーンジャケットにも匹敵するほど、あるいはそれ以上に価値のあるものだと知っているからです。
この水曜日の午後は、選手、家族、そして観客にとっても、忘れられない思い出を作るための貴重な一日。マスターズという最高の舞台で繰り広げられる、もう一つの美しい物語なのです。

