はじめに:とんぼが駆け抜けた島で、今起きていること
ゴルフの常識を覆す天真爛漫な少女・とんぼの姿に、心を鷲掴みにされたゴルファーは少なくないでしょう。彼女が3番アイアン一本でゴルフの全てを学んだ「火之島」。その舞台のモデルとなった鹿児島県・トカラ列島が悪石島を中心に、今、観測史上例のない規模の群発地震に見舞われています。穏やかだったはずの聖地で、一体何が起きているのでしょうか。
聖地・悪石島のいま:1000回を超える揺れと住民の苦悩
トカラ列島近海では、2025年6月下旬から体に感じる地震が1000回を超え、7月3日には悪石島で観測史上最大となる震度6弱を記録しました。
地震発生日時 | 震源地 | 最大震度 | マグニチュード |
2025年6月30日 | トカラ列島近海 | 5弱 | 5.3 |
2025年7月3日 | トカラ列島近海 | 6弱 | 5.5 |
この強い揺れにより、島内では崖崩れが発生。全島民に一時避nan指示が出され、人々は不安な夜を過ごしています。「いつ終わりが来るか分からない」「夜も眠れない」といった住民の疲弊した声が報じられており、十島村は希望する住民13名(0歳~80歳)の島外避難を決定し、鹿児島県も災害救助法の適用を決めました。島の方々の心労は計り知れません。
「オーイ!とんぼ」と悪石島の深い絆
「オーイ!とんぼ」では、主人公のとんぼが暮らす「火之島」のモデルが中之島、そして、物語の重要なキャラクターであるクタさんが住む「悪礫島」のモデルが、今回大きな揺れに見舞われている悪石島です。作中には悪石島の港や、背中に「悪」の字が入ったTシャツを着た島民の姿などが忠実に描かれており、十島村の公式サイトでは「聖地巡礼マップ」も公開されるなど、ファンにとって特別な場所となっています。

オーイ!とんぼ – オ ジング, はやし りか, 東地 宏樹, 喜多村 英梨, 青森 伸, 有馬 瑞香
なぜ揺れは止まらない?専門家が語る「海底台地の衝突」
今回の群発地震は、南海トラフ巨大地震などとはメカニズムが根本的に異なります。熊本大学の横瀬久芳准教授(海洋火山学)の解説を参考に、その特異な原因を見ていきましょう。
トカラ列島が位置するユーラシアプレートの下には、東からフィリピン海プレートが沈み込んでいます。このフィリピン海プレートには、「奄美海台」と呼ばれる、九州とほぼ同じ面積、高さ約4kmにもなる巨大な海底の台地(岩盤の塊)が乗っています。
この巨大な「奄美海台」が、まるで九州サイズの巨大ダンプカーのように、陸側のプレートに100万年以上も前から衝突を続けているのです。この衝突によって、プレートの浅い部分に非常に複雑なひずみが蓄積し、複数の活断層が動くことで、今回の記録的な群発地震が発生していると考えられています。
火山活動との直接的な関連性は低いと見られていますが、この特異な地質構造が、トカラ列島近海を日本でも有数の群発地震多発地帯にしているのです。
まとめ:聖地・悪石島に想いを寄せて
「オーイ!とんぼ」のファン、そしてゴルフを愛する一人として、悪石島とトカラ列島の状況を正しく理解し、応援の気持ちを寄せたいものです。
- 聖地を襲う試練: ゴルフ漫画「オーイ!とんぼ」の舞台、悪石島で震度6弱を含む1000回以上の群発地震が発生。
- 住民の状況: 崖崩れや断続的な揺れにより、一部住民は島外への避難を開始。心身の疲労が懸念されています。
- 特異な原因: 地震の背景には、フィリピン海プレートに乗った巨大な「奄美海台」が陸側プレートに衝突し続ける、特殊な地質構造があります。
- 今後の見通し: 専門家は、活動の収束時期を見通すのは困難としており、気象庁は引き続き同程度の強い揺れに警戒を呼びかけています。