
ゴルフをしていると、時として「どうやっても打てそうにない…」という場所にボールが止まってしまうことがあります。木の根元、密集したブッシュの中、急斜面など、物理的にスイングが困難な状況です。
そんな絶望的な状況でプレーヤーを救ってくれるのが「アンプレヤブル(Unplayable Ball)」のルールです。これは、プレーヤー自身が「このボールはプレー不可能だ」と判断した場合に適用できる処置で、ペナルティを受け入れる代わりに、プレー可能な場所から再開することができます。
アンプレヤブルのルールを正しく理解し、適切な選択肢を選べるかどうかは、そのホールのスコア、ひいてはラウンド全体の流れにも影響します。いざという時に慌てず、賢明な判断ができるよう、この機会にしっかり確認しておきましょう。
「アンプレヤブル」を宣言できるのはどんな時?
アンプレヤブルは、コース上のどこででも(ただしペナルティエリアを除く)プレーヤーが自分のボールを打つことが不可能だと判断した場合に宣言できます。
具体例:
- 木の根っこにボールが食い込んでいる
- 深いブッシュや茂みの中に入ってしまった
- 崖下や急斜面で、スタンスが取れない、またはスイングできない
- 大きな岩や障害物のすぐそばにある
重要なのは、「プレーヤー自身が打てないと判断すること」です。物理的に絶対に打てない状況だけでなく、「このまま打つのはリスクが高すぎる」と判断した場合も含まれます。
注意点:
- ペナルティエリア(赤杭・黄杭)内のボールに対して、アンプレヤブルを宣言することはできません。 ペナルティエリアには、それ専用の救済ルールがあります。
- 誰が見ても打てそうにない状況だけでなく、プレーヤー本人の技術や判断で「打てない」と判断すれば宣言可能です。
1打罰で選べる!アンプレヤブル宣言後の3つの救済オプション
アンプレヤブルを宣言した場合、1打の罰を加えて、以下の3つの選択肢の中から1つを選んでプレーを再開します。
救済オプション | 処置内容 | メリット | デメリット |
1. ストロークと距離 | 元々ボールを打った場所(直前のストロークを行った場所)にできるだけ近い場所にドロップしてプレーする。 | シンプルで分かりやすい。 | 打った距離を完全にロスする。 |
2. 後方線上の救済 | ボールがあった地点とホールを結ぶ後方線上に基点を決め、その基点から1クラブレングス以内(※ホールに近づかない)にドロップする。 | 元の場所より状況の良い場所を選べる可能性がある。 | 正確な後方線上を見つける必要がある。 |
3. ラテラル救済 | ボールがあった地点から2クラブレングス以内、かつホールに近づかない場所にドロップする。 | 比較的近い場所から再開できることが多い。 | ドロップできる範囲が限られる場合がある。 |
処置のポイント:
- ドロップ: いずれの救済処置でも、ボールは膝の高さからドロップします。ドロップしたボールは、選択した救済オプションで定められた救済エリア(例えばラテラル救済なら基点から2クラブレングス以内)に止まらなければなりません。
- バンカー内の特例: ボールがバンカー内でアンプレヤブルとなった場合も、上記3つの選択肢を選べます。
- ただし、選択肢2(後方線上)または選択肢3(ラテラル救済)を選び、かつバンカーの外にドロップする場合は、アンプレヤブルの1打罰に加えてさらに1打罰(合計2打罰)が必要になります。バンカー内にドロップする場合は追加の罰はありません。
状況判断がカギ!どのアンプレヤブル救済を選ぶべきか?
3つの選択肢のうちどれを選ぶかは、ボールがあった場所、ホールの状況、自分の得意な距離などを考慮して判断します。
- ストロークと距離 が有効なケース:
- ティーショットがすぐ近くの林に入り、前方に打てるスペースがない場合。
- OBゾーンのすぐ近くなど、他の救済オプションでは良いライが見込めない場合。
- 後方線上の救済 が有効なケース:
- ボールとホールの間に障害物(木、バンカーなど)があり、それを避けたい場合。
- フェアウェイなど、開けた場所まで後退できる場合。
- ラテラル救済 が有効なケース:
- グリーン近くなど、あまり距離をロスしたくない場合。
- 後方線上にドロップできる良い場所がない場合。
- 元の場所から少し横にずらせば、格段に打ちやすくなる場合。
どの選択肢が最も有利かは、状況によって大きく異なります。迷った場合は、同伴競技者に相談してみるのも良いでしょう(アドバイスを求めることはルール上問題ありません)。
スムーズなプレーのために:アンプレヤブル宣言の手順
アンプレヤブルを宣言し、救済を受ける際の手順は以下の通りです。
- 宣言: まず、同伴者に「アンプレヤブルを宣言します」と明確に伝えます。どの救済オプションを選ぶかも伝えられると、よりスムーズです。
- ボールのマークと拾い上げ: 救済を受ける前に、ボールの位置をマークして拾い上げます。(マークせずに拾い上げると1打罰になる可能性があります)
- 基点の決定: 選んだ救済オプションに従って、ドロップするための基点(ニヤレストポイントや後方線上の点など)を決定します。
- 救済エリアの決定: 基点から定められた範囲(1クラブレングスまたは2クラブレングス)で、ホールに近づかない救済エリアを定めます。
- ドロップ: 膝の高さから、決定した救済エリア内にボールをドロップします。
- インプレー: ボールが救済エリア内に静止すれば、そのボールがインプレーとなります。
注意: アンプレヤブルの処置に時間をかけすぎると、スロープレーの原因となります。宣言からドロップまで、できるだけスムーズに行うことを心がけましょう。
アンプレヤブルは、決してネガティブなものではなく、困難な状況から脱するための有効な手段です。ルールを正しく理解し、状況に応じて最適な選択をすることで、大叩きを防ぎ、スコアメイクに繋げることができます。もしラウンド中に「打てない!」と感じたら、落ち着いてアンプレヤブルの選択肢を思い出してみてください。