まず安全の確保を優先してください。この記事は情報の見分け方の解説です。今まさに揺れの直後・余震の中・津波警報等のもとにいる方は、安全行動を先に行ってください。情報の整理は、安全が確保できてからで構いません。
大きな地震のあと、SNSを開くと、被災地の画像や動画が次々に流れてきます。その中に、「ゴルフ場がひどいことになっている」という投稿が混じっているのを見て、胸が締めつけられた方もいるでしょう。
でも、立ち止まってください。その画像、本当に“今回”のものですか。

災害のたびに、過去の災害の画像が「今回の被害」として再利用されたり、関係のない場所の画像が誤って拡散されたりします。さらに近年は、実在しない被害をそれらしく見せる生成画像も出回ります。これらは悪意があるとは限りません。心配した人が、良かれと思って拡散してしまう——その連鎖が、誤情報を大きくします。
この記事は、誰かを責めるためのものではありません。あなた自身が振り回されず、そして誤って広げないための手順を渡します。入口はゴルフ場の画像ですが、手順はすべての災害情報に通用します。読み終わるころには、流れてきた画像を「そのまま信じる」のではなく、「確認する」目が身についているはずです。
※この記事は一般的な見分け方の目安であり、個別の投稿の真偽を保証するものではありません。最終的な事実確認は、必ず気象庁・NHK・各自治体の防災情報・各ゴルフ場の公式発表で行ってください。
まず「拡散しない」——見分けより先にやること
見分け方の手順を説明する前に、最も大事なことを先に言います。確認できるまで、拡散(転載・引用・リポスト)しない。これが、見分け方のどの技術より先にあります。
人は、心配な画像ほど早く誰かに伝えたくなります。「大丈夫?」「ここ知ってる?」——その気持ちは自然です。しかし、未確認の画像を拡散する行為自体が、誤情報を増やします。見分け方が完璧でなくても、「分からないうちは拡散しない」だけで、あなたは誤情報の連鎖を断てます。
疑問符を付けて拡散するのも、避けてください。「これ本当?」と添えても、画像は一人歩きします。確認できるまで、保留する。保留は、冷たさではなく、誠実さです。
【手順1】出典を見る——誰が・いつ・どこで
画像そのものを見る前に、その画像が「どこから来たか」を見ます。ここを飛ばすと、見分けは難しくなります。
| 見る項目 | 疑うサイン |
|---|---|
| 投稿者 | 現地の公式アカウントでない/普段その地域の情報を発信していない |
| 投稿日時 | 発災より前に投稿されている/日時が不自然 |
| 撮影場所の記載 | 場所が書かれていない/書かれている場所と画像の内容が合わない |
| 一次情報か | 誰かの投稿の転載・スクリーンショットである |
特に「転載の転載」は注意が必要です。元の投稿から切り離された画像は、出典も日時も失われています。遡って一次情報(最初に撮影・投稿した人や公式)にたどり着けない画像は、それだけで信頼性が下がります。
【手順2】画像そのものを調べる——逆画像検索と日時の照合
出典が曖昧な画像は、画像そのものを検索にかけて、過去に出回っていないかを確認します。これが逆画像検索です。画像を保存またはコピーし、画像検索機能にかけると、同じ画像が過去にいつ・どこで使われたかを探せます。
逆画像検索の考え方
特定のサービス名に依存せず、「画像で検索する機能」一般を使ってください。画像をアップロードする、または画像のURLを貼り付ける方法があります。検索結果に過去の災害の日付や、別の地域の報道が出てきたら、その画像は今回のものではない可能性が高い、と判断します。モバイル端末でも、画像を長押しして検索にかける方法が用意されていることが多いです。
ただし、正直に書いておきます。逆画像検索は万能ではありません。画像が加工されていたり、切り取られていたり、解像度が低かったりすると、ヒットしないことがあります。だから「ヒットしなかった=本物」ではありません。ヒットしなくても、他の手順と合わせて判断してください。
画像の付帯情報(EXIF)についての正直さ
デジタル画像には、撮影日時や機種などの付帯情報(EXIF)が含まれることがあります。これがあれば、撮影時期の照合に役立ちます。しかしSNSに投稿された画像は、この情報が自動的に削除されていることがほとんどです。したがって「付帯情報が見られない=偽」ではありません。見られないのが通常、と理解しておいてください。
【手順3】古い画像の流用を見抜く——季節と日付の矛盾
過去の災害の画像が流用される場合、画像の中身と「今回の条件」が矛盾することがあります。ここが、最も見抜きやすいポイントです。
たとえば今回の地震は7月です。にもかかわらず、流れてきた画像に桜が写っていたり、冬服の人が写っていたりしたら、それは今回のものではありません。2016年の熊本地震は4月でしたから、春の風景の画像が「今回」として再利用されやすいのです。
| 今回の条件(2026年7月) | 画像にこれらが写っていたら疑う |
|---|---|
| 真夏 | 桜・紅葉・雪・冬服・厚手の服装 |
| 日中の発災 | 明らかに夜間だけの特徴(ただし夜間撮影もありうるため補助的に) |
| 現在の建物・看板 | 既に撤去された看板・古い店舗名・旧ロゴ |
季節と日付の矛盾は、画像をよく見れば気づける類のものです。技術は要りません。「7月のはずなのに、なぜこの風景?」と問いを立てるだけで、流用を見抜けるときがあります。
【手順4】生成画像の疑い方——単独で断定しない
実在しない被害を、それらしく見せる生成画像も出回ります。ここでは正直に、「これを見れば必ず生成画像だと分かる」決め手は存在しない、と書いておきます。生成技術は進んでおり、かつて手がかりとされた特徴が、当てにならなくなっているものもあります。だからこそ、単独の特徴で断定せず、複数の手がかりで「疑う」のが正しい構えです。
疑う手がかりの例を挙げます。ただし、これらは「あれば疑う」ものであり、「なければ本物」を意味しません。
- 文字の崩れ:看板・標識・書類の文字が、読めない形に崩れている。
- 細部の不自然さ:人の指の本数・構造物の接合部・繰り返し模様の破綻。
- 光源の不一致:影の方向がそろっていない/光の当たり方が矛盾している。
- 過度に整った構図:現実の被災写真にない、不自然な“絵としての完成度”。
- 背景の融解:奥の景色が意味をなさず溶けている。
そして何より、「出典が示されていない」「一次情報に遡れない」生成画像風の画像は、それ自体が大きな疑いの根拠になります。手順1の出典確認と組み合わせることで、生成画像かどうかの断定を避けつつ、「拡散すべきでない」という判断は下せます。真偽を断定できなくても、拡散しない判断はできる——これが大切です。
【手順5】公式と照合する——認証マークも疑う
画像の真偽に迷ったら、公式の情報と突き合わせます。気象庁の震度・津波情報、NHKや報道機関の報道、自治体の防災情報、そしてゴルフ場なら各コースの公式発表。画像が示す被害が、公式のどの情報とも一致しないなら、保留してください。
なお、SNSの「公式マーク(認証バッジ)」も、それだけで完全に信頼できるとは限りません。アカウント名やアイコンを公式に似せた偽アカウントが存在します。確認するときは、マークだけでなく、アカウントのURL・運用歴・他の公式チャネル(公式サイトなど)との一致を見てください。公式サイトのリンク先が本物かどうかも、確認の対象です。
速報は「更新されるもの」——情報に振り回されない心の作法
誤画像の見分け方とは少し違いますが、情報に振り回されないために、もう一つ大事な作法があります。それは、速報は必ず更新される、と前提しておくことです。
発災直後の情報は、不正確さを内包しています。震度も、被害も、警報も、最初の報いが最終形ではありません。最初の報いを「仮の姿」として受け取り、続報で上書きされていくものだと心得ておくと、一つ一つの報いに一喜一憂しなくて済みます。
また、情報を追い続ける時間を、自分で区切ることも大切です。常に最新を確認し続けると、不安が増幅します。確認は1日数回、信頼できるソースに限る。それ以外は、生活に戻る。これは無関心ではなく、長く正しく関わり続けるための作法です。
最後に——分からないまま、保留していい
ここまで5つの手順を書きましたが、全部をやっても、真偽が分からない画像は残ります。それでいいのです。分からないものは、分からないまま保留していい。
「本当かどうか分からない」は、失敗ではありません。安易に信じるより、ずっと誠実な態度です。そして保留した画像は、拡散しない。それだけで、あなたは誤情報の連鎖に加担せずに済みます。
心配な気持ちは、画像を拡散しなくても伝えられます。「〇〇のことが気がかりです。公式の情報が出たら教えてください」——こう言えばいい。画像を回さなくても、気持ちは届きます。
災害のとき、本当に役立つ情報は、速さよりも正確さです。そして正確さは、一手間かけた確認からしか生まれません。あなたのその一手間が、誰かの不安を減らし、現場の混乱を減らします。
流れてきた画像に、どうか一呼吸置いてください。信じる前に、確認していい。分からないまま、保留していい。それが、情報に振り回されない、いちばん確かな方法です。
※この記事は一般的な見分け方の目安であり、個別の投稿の真偽を保証するものではありません。生成画像の見分け方は技術の進歩により変わりうるため、最新の情報と合わせてご判断ください。事実確認は必ず気象庁・NHK・各自治体の防災情報・各ゴルフ場の公式発表で行ってください。

