ゴルフコースでは、練習場では経験できない様々な状況に遭遇します。「この場面、プロならどう考えるんだろう?」そう思ったことはありませんか?今回は、トッププロゴルファーの鈴木愛選手がアマチュアゴルファー(小田さん)のラウンドに同行し、リアルな状況下での疑問や悩みに答える特別レッスンの様子をご紹介します。ショートホールの考え方から、グリーン周りの繊細なタッチ、苦手なバンカーショットまで、具体的なアドバイスを通じてスコアメイクのヒントを探ります。
ショートホールの選択:ティーアップのメリットとスイングの要点
レッスンはABCいすみゴルフコースのPar3、173ヤードのホールからスタート。ピンまでの実測距離は140ヤード、横風が吹いています。小田さんは距離と風を考慮し、7番アイアンかユーティリティかで迷います。ここでアマチュアが悩むポイントの一つが、ショートホールでのティーアップについて。
小田さん: 「ショートティーって、使うべきか使わないべきか、いまだによく分かってないんですよ。」
鈴木プロ: (間髪入れずに)「絶対使った方がいいです!」

鈴木プロによれば、わずかでもティーアップすることで、ボールとクラブヘッドの間に芝が挟まる影響を減らし、よりクリーンにインパクトできる確率が高まるとのこと。特にアイアンに苦手意識があるゴルファーにとっては、ミスのリスクを軽減する有効な手段です。
最終的に小田さんは7番アイアンを選択。鈴木プロはスイングに対し、「トップはコンパクトに」「体重移動を意識して」とアドバイス。アマチュアは飛ばそうとする意識からトップが大きくなり、スイングが不安定になりがちです。鈴木プロは、トップを必要以上に大きくするのではなく、体重移動でしっかりと力を伝えることの重要性を指摘します。
小田さんのショットは、わずかにトップ気味の打球音でしたが、ボールはグリーン方向へ。そして見事にグリーンオンし、バーディーチャンスにつけました。
小田さん: 「え、ミスですよね?」
鈴木プロ: 「ナイスです!いいんですよ、ゴルフなんて結果が良ければ。コースはそういうこともありますから。」


完璧なショットでなくても良い結果に繋がるのがゴルフの面白さであり、難しさでもあります。プロの言葉には、結果を受け入れ次に繋げるポジティブな姿勢が表れていました。
ホール状況 (3H Par3) | 173Y (実測140Y) / 横風 |
アマチュアの悩み | ショートティーを使うべきか |
プロのアドバイス | 絶対使うべき(クリーンヒットしやすいため) |
クラブ選択 | 7番アイアン |
スイングのポイント | コンパクトトップ / 体重移動を意識 / 振りすぎない |
ショット結果 | 少しトップ気味だがグリーンオン、バーディーチャンス |
プロのコメント | 結果が良ければOK! |
グリーン上の判断力:傾斜を読むためのステップ
グリーン上では、ライン読みがスコアを左右します。小田さんはボールとカップを結ぶラインを下りスライスと判断しましたが、鈴木プロは異なる見解を示します。

鈴木プロ: 「(ラインを横から見て)いや、これ右が高い(フック)ですね。下りですけど。」
ラインを読む際の基本的なステップとして、鈴木プロは以下を推奨しています。
- ボールの後方から全体像を見る: まず大まかな傾斜を把握します。
- ラインの横から高低差を確認: ボールとカップの高低差(上りか下りか)を正確に見極めます。
- 中間地点に立つ: ラインの中間地点に立ち、足裏で左右どちらが高いかを感じ取ります。これにより、微妙な傾斜(スライスかフックか)が分かりやすくなります。
小田さんはこれらのステップを踏まえ、改めてラインを確認。最初の下りスライスという読みから、下りのフックラインへと認識が変わったようです。
パッティング前の素振りに関してもアドバイスがありました。
鈴木プロ: 「素振りは、しっかりカップを見ながら、距離感を合わせてください。」
ボールだけを見て素振りするのではなく、ターゲットであるカップを意識することで、より実践的な距離感を養うことができます。
バンカーショットの常識が変わる?「ハンドレイト」の勧め
小田さんが苦手とするバンカーショット。ピンまで約25ヤードと距離のある状況です。ここで鈴木プロは意外なクラブ選択を提案します。
鈴木プロ: 「距離があるので、56°だと飛ばないかもしれない。50°でいきましょう。」
通常バンカーで多用されるサンドウェッジ(56°など)よりロフトが立っている50°のウェッジを使うことで、同じ振り幅でもボールを遠くに飛ばしやすくなります。
さらに、構え方についても重要な指摘がありました。

小田さん: (ハンドファースト気味に構える)
鈴木プロ: 「小田さん、バンカーでそれはあまり良くないです。どっちかというと、まっすぐか、ちょっとこっち(ハンドレイト)に入れてほしい。」
アプローチのようにハンドファーストに構えると、リーディングエッジ(刃の部分)から砂に入りやすく、深く刺さってしまうミス(ザックリ)や、逆にトップするミスの原因になります。シャフトを垂直にするか、少しハンドレイト(手元がボールより後方)気味に構えることで、クラブのソール(底の部分)にあるバウンスが使いやすくなり、砂を適度に爆発させてボールを運びやすくなるのです。
また、体を開いて構える必要はなく、目標に対してスクエアで良いとのこと。
バンカーショット (ピンまで約25Y) | プロのアドバイス | なぜ? |
クラブ選択 | 50°ウェッジ | 距離があるため、56°より飛ばしやすい |
アドレス(手元) | 垂直 or 少しハンドレイト気味 | ハンドファーストだと刺さりやすい。バウンスを使いやすくするため |
アドレス(体) | スクエア(目標にまっすぐ) | 無理に開く必要はない |
スイング | 砂ごとボールを叩く(ボールの手前の砂を打つ) |
この革新的な(?)アドバイスを受けた小田さん。50°ウェッジでハンドレイト気味に構え、見事に砂を爆発させると、ボールはピンに向かって一直線!
小田さん: 「うおぉぉぉ!!!」
鈴木プロ: 「上手い!めっちゃ上手く打てました!」
ボールはピンそば約1メートルにピタリ。これには鈴木プロも驚きの声を上げ、見事なパーセーブに繋がりました。
左足下がりのアプローチ:転がしで寄せる技術
最終ホール手前、ボールはグリーン手前の左足下がりのラフに。グリーンエッジまでは約5ヤードですが、ピンはグリーン奥にあり、転がせるスペースが20ヤードほどあります。
鈴木プロ: 「ここは転がせる範囲があるので、PWか50°で転がしましょう。」
左足下がりのライは、自然とクラブが鋭角に入りやすく、ボールが低く、強く飛び出す傾向があります。無理にボールを上げようとするとトップやザックリのミスが出やすいため、このような状況では転がしのアプローチが有効です。

構え方のポイントはバンカーショットと共通する部分もあります。
- ハンドファーストにしすぎない: 手元が前に出すぎるとリーディングエッジが刺さりやすくなります。
- 足は肩幅くらいに閉じる: スタンスが広すぎると体が不安定になります。
- フォローは低く、長く出す: 地面を掃くように、クラブヘッドを低く長く動かすイメージで打ちます。これにより、安定したインパクトと転がりが期待できます。
鈴木プロのお手本ショットは、イメージ通りにボールが転がり、ピンそばへ。状況に応じたクラブ選択と打ち方の重要性がよく分かるレッスンでした。
左足下がりアプローチ (エッジまで5Y, ピンまで約25Y) | プロのアドバイス | なぜ? |
状況判断 | グリーンに転がせるスペースがある | 無理に上げる必要がない |
クラブ選択 | PW or 50° | 転がしやすいクラブ |
アドレス | 手元は体の中 / 足は肩幅程度 | ハンドファースト過ぎはNG / 安定感を出すため |
スイングイメージ | フォローを低く長く出す | 安定したインパクトと転がりを生む |
まとめ:プロの視点をスコアアップに活かす
今回の鈴木愛プロによるラウンドレッスンでは、アマチュアゴルファーが日頃抱える疑問やミスしやすいポイントに対し、非常に実践的で分かりやすいアドバイスが提供されました。特に、状況に応じたクラブ選択や、バンカー・アプローチでの「ハンドファーストにしすぎない」構え方は、多くのゴルファーにとって大きな気づきとなったはずです。プロの思考法や技術のエッセンスを取り入れ、皆さんのゴルフがさらに向上することを願っています。