長年の努力が結実した瞬間:工藤遥加、プロ15年目の歓喜
2025年3月30日、宮崎の空の下( UMKカントリークラブ )、女子ゴルフ界に新たな感動の物語が生まれました。「 アクサレディスゴルフトーナメント in MIYAZAKI 2025 」最終日、プロ入りから15年、実に4991日という長い道のりを経て、工藤遥加選手(32歳)が悲願のJLPGAツアー初優勝を飾りました。通算267試合目にして掴んだ栄冠は、彼女自身の努力はもちろん、支え続けた多くの人々の想いが詰まった、重みのある勝利です。この記事では、その感動的な優勝までの軌跡と、大会で見られたドラマを詳しくお伝えします。
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冷静と情熱が生んだ逆転劇:最終日ノーボギー「67」の輝き
首位と2打差の3位タイで最終日を迎えた工藤選手。優勝へのプレッシャーがかかる中、彼女のプレーは冷静さと、内に秘めた情熱を感じさせるものでした。前半で3つ、後半で2つのバーディーを奪い、スコアを5つ伸ばす「67」。特筆すべきは、大会を通じて難易度の高いホールが続く中でも、最後までボギーを叩かなかったことです。「最終日、よく耐えた。ボギーなしって、エラいと思う」と自らを称賛した言葉にも、その達成感が滲みます。
最終組の1つ前でプレーした工藤選手は、ギャラリーの変化も感じていました。「最初は地元の選手への声援が多かったけれど、プレーが進むうちに私への声援が増えて…最終的には皆さんが応援してくれた」と語るように、そのプレーは観る者を惹きつけ、会場の雰囲気を味方につけていきました。まさに、勝者だけが持つ特別な力が発揮された瞬間でした。
そして迎えた最終18番パー5。第3打をピンそば1.8メートルにつけ、このウィニングパットを落ち着いて沈め、通算10アンダーでフィニッシュ。プロ転向から4991日目にして、ついに歓喜の瞬間を迎えました。この優勝劇の伏線は、第2日の粘りにもありました。12番から痛恨の3連続ボギーを叩きながらも、16番から3連続バーディーで取り返したことが、最終日の見事なプレーにつながったと本人は振り返っています。
乗り越えた壁:「挑戦しないことが格好悪い」意識を変えた出会いと家族の絆
工藤遥加選手は、プロ野球界のレジェンド、工藤公康さんを父に持つことで早くから注目されてきました。その期待の大きさが、時として重圧となることもあったでしょう。才能を評価されながらも、なかなか優勝には手が届きませんでした。
そんな彼女にとって大きなターニングポイントとなったのが、2022年12月の出来事です。女子ソフトボール日本代表で活躍する 藤田倭選手(ビックカメラ高崎) に、自らSNSのダイレクトメッセージで連絡を取り、合同練習に参加。「失敗することは格好悪くない。挑戦しないことが格好悪いことだ」という藤田選手の言葉や姿勢に触れ、「プロ精神を叩き込まれ、目が覚めた」と語っています。
そして、家族の存在も大きな支えでした。今大会前、母から父・公康氏が監督退任時に記したメモを見せられたといいます。そこには「遥加を優勝させたい」という父の強い想いが綴られていました。そのエピソードを語る際には、涙を浮かべる場面も。「両親の愛は素晴らしい」という言葉には、家族への深い感謝の念が込められています。父から娘へ、受け継がれる「工藤家の愛のDNA」が、今回の大きな成果につながったのかもしれません。
熾烈な優勝争い:小祝さくらの記録的猛追と若手の奮闘
最終日のドラマは、工藤選手の優勝だけではありませんでした。
小祝さくら 10番スタートの“裏街道”から猛チャージ 今季自己最高2位 「すごくいいプレーができた」https://t.co/G9fWVElhRK
— スポーツ報知 (@SportsHochi) March 30, 2025
- 小祝さくら選手: 首位と5打差の29位タイからスタートし、驚異的な追い上げを見せました。7バーディー、ノーボギーの「65」を叩き出し、通算8アンダーで単独2位フィニッシュ。最終日に29位から逆転優勝すればツアー史上最大差記録更新となるところでしたが、あと一歩届きませんでした。それでも「昨日まではショットの調子が悪くて、こんなに良いスコアが出るなんて思っていなかった」「すごくいいプレーができたし、ノーボギーで回れたのは嬉しい。自信につながる」と、充実感を口にしました。優勝した工藤選手に対しても「後半難しいホールが続く中、ノーボギーでいいプレーをしていた。2打届かなかったのは仕方ない」と、潔く勝者を称えました。
- 若手の健闘: 地元・宮崎出身で19歳の菅楓華選手は、開幕から3戦連続で最終日最終組入り。大きな期待を背負い首位タイでスタートしましたが、ショットが安定せずスコアを伸ばせず6位。「流れに乗れなかった」と悔しさを見せつつも、「前の自分よりも成長できていると思う。次はチャンスを物にできるように頑張りたい」と前を向きました。同じく首位タイスタートの22歳、小林光希選手もスコアを落とし4位。「緊張はあまりせずに自分のプレーはできた。攻めることはできたが、詰めが甘くボギーが多かった」と課題を口にしました。
開幕3戦続けて最終日にボギー先行 菅楓華は6位「波に乗れなかった」#菅楓華 #アクサレディスゴルフトーナメントinMIYAZAKI #ゴルフhttps://t.co/sEpqgicDGE
— GDOニュース (@GDO_news) March 30, 2025
【アクサレディスゴルフトーナメント in MIYAZAKI 2025 最終結果】
順位 | 選手名 | スコア | 前日比 | 最終日スコア | 備考 |
優勝 | 工藤遥加 | -10 | ↑2 | 67 (-5) | プロ15年目、ツアー初優勝 |
2位 | 小祝さくら | -8 | ↑27 | 65 (-7) | 最終日ベストスコア |
3位 | 河本結 | -7 | ↑4 | 69 (-3) | |
4位 | 小林光希 | -6 | ↓3 | 73 (+1) | 首位タイスタート |
5位 | 吉田優利 | -5 | ↑8 | 69 (-3) | |
6位 | 菅楓華 | -5 | ↓5 | 74 (+2) | 首位タイスタート |
6位 | 天本ハルカ | -5 | ↑4 | 70 (-2) | |
6位 | 李知姫 | -5 | ↑11 | 69 (-3) | |
6位 | 脇元華 | -5 | ↑11 | 69 (-3) | |
6位 | ペ・ソンウ | -5 | ↑11 | 69 (-3) | |
6位 | 新垣比菜 | -5 | ↑11 | 69 (-3) |
(上位抜粋)
新たなスタートライン:「50歳までプレーする」宣言に込めた決意
「父は48歳で引退。私は50歳になってもJLPGAツアーでプレーします。年齢は関係ない。頑張っている人が勝ちますよ」
優勝後のインタビューで、工藤選手は力強くこう宣言しました。長年の苦労を経て掴んだ初優勝は、ゴールではなく、新たなキャリアの始まりを告げるものです。今回の勝利で得た自信と経験、そして周囲への感謝を胸に、彼女はこれからも挑戦を続けます。工藤遥加選手の今後の活躍に、多くのゴルフファンが注目しています。